作文
おとうさんのさいしゅっぱつ
埼玉県所沢市 小学校1年 R.K.さん
ぼくのおとうさんはタクシーのドライバーです。朝はやくでかけるときもあれば夜から行くこともあります。ほとんどあえません。
ぼくはおとうさんのタクシーにのったことがありません。でもにんぷさんをたすけたりタクシーの中でふりこめさぎをふせいだり、なんかいもひょうしょうされています。すごいんです。
それだけじゃなくて、おとうさんはまいにち、ぼくとこうかんにっきをしてくれます。
「おとうさんはおしごとであえないから、こうかんにっきでおしゃべりしよう」
そういってぼくたちはふたりだけのこうかんにっきをはじめました。さいしょはひらがなばかりだったけどかん字がかけるようになると「すごいね」ってほめてくれました。
でも大じけんがおこりました。テーブルにおいといたノートにおとうさんのへんじがありません。
「あれ?きづかなかったのかな?」
ぼくはおもいました。だからつぎの日は、ひらいておいときました。おとうさんが見てくれるように。しかしです。その日もおへんじをかいてもらえませんでした。
「おとうさんはいましごとでつかれているから、おかあさんがかいてあげるよ」
おかあさんは言いました。でもぼくはおとうさんのおへんじがほしくて「おかあさんはかいちゃダメ!」って言いました。おかあさんはかなしそうなかおをしてました。
その日は、にちよう日じゃないのにおとうさんがいました。
「あれ?おとうさん、きょうはおしごと行かないの?」
ぼくはちょっとうれしくてききました。おとうさんは何も言いません。おねえちゃんは「いかないんじゃなくて、いけないんだよ」って、むずかしいことを言いました。よくわかりませんでした。
つぎの日もそのつぎの日もずっといえにいました。ほんとうはすごくうれしいはずなのに、おとうさんがしょんぼりしていたので、声をかけられませんでした。
『4月3日 おとうさんへ どうしてげんきがないの? ぼくのことがキライになっちゃったの?」
ぼくはゆうきを出してこうかんにっきにかきました。でもおへんじはありません。それどころか「しにたい」とか「いきていてもいみがない」とか言いはじめました。ぼくは、こわくなってこうかんにっきもかけなくなりました。
なんにちかたってから、おかあさんがおねえちゃんとぼくをわしつによびました。
「おとうさんはいま、こころのびょうきなんだよ」
おかあさんは言いました。ぼくは「うそ!」って言いました。
「いっぱいおしごとをしてこころがつかれちゃったんだよ。でもくすりをのんで休めば、またいっしょにあそべるから大じょうぶだよ。」
「でもおとうさん、しにたいって言ってたよ。」
おねえちゃんがおかあさんにききました。するとおかあさんは「しにたいって言ってるけど、ほんとにしにたいんじゃないんだよ。たすけてってことなんだよ」とせつめいしてくれました。だからぼくはおとうさんがびょうきなのはかなしいけど、ちゃんと休めばなおるんだっておもいました。
そのご、おとうさんは少しずつげんきになりました。「しにたい」とかマイナスなことを言わなくなりました。ぼくのかん字れんしゅうのときは、「体からマイナスをとるのが休という字だよ」とおしえてくれました。
「じゃあ、おとうさんもしっかり休まないと。」って言ったら「まいったな」ってわらいました。
もしまたおとうさんが「しにたい」って言ったら「たすけて」ってことだから、あわてないようにしたいです。もし友だちが言ったら、たすけてあげたいです。
おとうさんは、このまえ、こうかんにっきにこうやってかきました。
『5月8日 いっぱい、しんぱいかけてごめんなさい。おかげで、げんきになりました。
これから、また、おきゃくさんやかぞくをささえていきます。』
おしごとも、ぼくたちのことも、だいじにしてくれるおとうさん。そんなおとうさんがぼくはすきです。だいすきです。
講 評
おとうさんがだいすきだということが、げんこうようしからあふれんばかりに、いっぱいつたわってきました。そのきもちがつうじて、おとうさんのさいしゅっぱつにつながったのでしょう。ほんとうによかったですね。また、ほとんどあえなくても、おとうさんから、おしごとのこともたくさんべんきょうできているのだなとかんじられました。おかあさんやおねえちゃんもふくめて、とてもいいかぞくですね。